のどけからましフォールズロードそんな経験の持ち主の奴だが、 平和の為のチャリティーコンサートと聞くと、めんどくさいと言いつつも、出演は断らない。 で、プロテスタントの友人も多い。 その中の一人、ビル、現地の人なら名前を聞いただけで彼が、プロテスタントと分かる。 なにしろ、ビルと言うことはウイリアム、 ウイリアム征服王だか、オレンジ公ウイリアムだか、アイルランドを征服(侵略)したプロテスタントの王様の名前で、北アイルランドの カトリックなら、天地がひっくり返ろうと子供にウイリアムなんて名前は付けない。 しかしカトリックとプロテスタントの区別も碌につか ない当時の私はそんな事は知らず、当然、彼の信仰なんて知りしもしなければ、興味もなかった。それに少々食傷気味でもあった。 たった数カ月ベルファストにいただけで、それまでの一生分の宗教的質問を受け、ある時など、ケネビスで、 好い気分になった初対面の女性に何の脈絡もなく「あなた教会に行くの?」と聞かれ、「行かない。行った事無い。」ッて答えたら、 「バッドガール」 で、そのビルだが、奴とはよく一緒に2ピースでプレイをしていて、 奴のバンドでもよくギターを引いた。 私がアイルランドにいた当時も一緒に何度かヨーロッパツアーにいったりしていた。 彼はかなりのテクニシャンだ。 十八番は、スパニッシュ、いわゆるフラメンコ調のナンバー、 彼がこれをやると必ず、パブは総立ちになる。 それも練習の為せる業、未だに彼は普段ギグがない時は、毎日4時間ギターの練習をしている。 残りの14時間は寝ている。 で、残りの6時間は食べているか飲んでいるかだけという、 なかなかのつわものでもある。 私が彼をカトリックと勘違いしていた理由のに一つに、彼が毎週マキナニーズという、悪名高いフォールズロードにあるパブで、 プレイをしていたからというのがある。 フォールズロードというのは、バリバリのカトリック居住区で、ベルファストの西側に位置しており、 ウエストベルファストといえば、その通りを中心とした地域を指す。 何故かそのフォールズロードの少し北を平行して走っている通りにシャンキルロードというのがある。 こちらの方は、反対にプロテスタントの居住区で、歩道や塀といった全てが、 イギリスのナショナルカラーである赤白青に塗りたくってある。 80年代にこの二つの通りの間にピースラインが設けられたと言うので、 何かと思ったら、ただの壁。 まあベルリンの壁のようなもの。 トラブルが耐えないので、物理的にそれを回避しようといういわゆる隔離政策なのだが、 進歩なんだか後退なんだか良く分からない。 根本的解決にはなってはいないと思うが、 その地域でのトラブルはかなり減ったとのこと。 当時私達もよくそこに彼のプレイを見に行ったりしていた。 そんなある時、 ファーストセットも終わり、 セカンドセットに入って数曲目、 ちなみに、ベルファストのパブで、ライブがある場合、 30分のブレークを挟んで1セット1時間の2セットと言うのが普通。 彼がプレイを始めるといきなり客席はシンとなり、何も言わず、それまで和やかにビールなりを飲ん でいた人たちは席を立ち、気がつくとパブの中は、 私達とスタッフを除くと空っぽ。 その後も彼は、数曲プレイし、その間にもボチボチ新しい客も 来たのだけれど、かなり静かな中で、ギグは終了し、パブも閉店時間となった。 ドアマンが残った客を追い出し、 スタッフもパブの片付けもほぼ終わり、「お腹空いた〜!」「タクシー呼んで〜!」等ト言いつつ帰宅。 なんとなく、突然パブから人が消えたのが気になったので、 奴に質問をしてみた。 私「なんか、今日のビルのギグ、妙じゃなかった? 突然空っぽになったでしょ?気がついた?」 奴「ああ〜。。。」 この返事何か知っているな。 私「どうしてなの?」 奴「プロテスタントの曲をやったから。」 私「えっ?、、、それって、知らなかった。でも平気なの?危なくないの?」 奴「勿論、危ない!」 私「危ないって、何で誰も何も言わないの?」 |