のどけからましケルティックタイガー登場世紀末のヒッピー 私達が、ドイツで住んでいたところは、オランダに近い西ドイツのルーアゲビートという地域にある O.という小さな市。 もともと炭坑で栄えた地域で、今でも工業がさかん。 まあイギリスでいえばマ ンチェスターとその郊外といったところ。 今はもう炭坑も殆ど閉山になり、その再開発にと何を血迷う かドイツ人てなかんじで、でっかいコンプレックスをその大学も無い小さな市の真中に建設してしまった。 公園、アリーナ、ショッピングセンター、運河沿いにはカフェが並び、プラネットハリウッドにナムコま であるといった、日本でいうお台場みたいなもんですな。 で、その中に例のドイツで一番大きいといわれ るアイリッシュパブがある。まあ確かに大きい、アイルランドの農家をモチーフにして建てられたという のだが、口の悪い連中に言わせると、GI(そのパブの名前)は、パブじゃ無く、博物館だとことになる。 その日の午後も、いつものように、ショッピングがてら、休憩しつつ、GIで、うだうだとお喋りをし ていた。 そこへっやって来たのは、友人のドイツ人のミュージシャン、アレックス、彼もここでレギュ ラーで月に1、2回プレイしているのだ。ま、いずれにしろ、ローカルミュージシャンにとってパブめぐ りは情報収集や交換を兼ねた営業活動。 もっともその日は、gig it! の打ち合わせ。 gig it!というのは、なにかっていうと、要は、アマチュヤミュージシャンやセミプロその他誰でもギグを やりたい人向けのフリーステージ(Do you wanna play? We have stage!)みたいなもの。 奴とアレッ クスで企画進行、パブの暇な水曜、月に1回、GIの上にある広間を借りてやろうということになり、今日 はそのうち合わせだったのだ。 ああだこうだと話をしていると、アレックスが思い出したように、ジャケっトのポケットから何かを取 り出し、奴に「マークマッカランて知ってるか?」ときく。 「マーク、ああ、知ってるよ。昔、ベルファストでボスカーコンテストで知り合った」奴が答えると、 アレックスは説明をはじめた。 週末、ブレーメンでギグがあって行ったんだけど、で、そこで、マークと 会い、なにげに話を始めると奴の事を知っているかと言う話になり、アレックスに奴にあう時にこれを渡し てくれと頼んだらしい。で、何を渡してくれと頼んだかと言うと、手紙とCD。 手紙を要約すると、
マークは今はブレーメンを拠点にライブ活動をしている。
名前を聞いてとても懐かしく嬉しい。ぜひ会いたい。
アレックスから奴の連絡先は、聞いたので、
今度、近くで、ギグがある時には連絡する。
CDを渡すようにアレックスに頼んだ。
うんぬん。CDを見てみると、白黒のステージ写真を着色してある、いかにも手作りといった感じのジャケットで、 ケルティックタイガーと書いてある。写真には、ギターを持った長髪の男性の横に、なぜかかわいらしい 女の子が、何やらパーカションの様な物を手に持って写っている。で、裏には収録曲が書いてあるのだけ ど、「バリバリのアイリッシュフォーク」。 それから数週間後、マークから奴に連絡があり、オランダのギグの帰りに、寄って行くから泊めてほしい と連絡がある。 その当日。 「マーク、今日くるんでしょ?何時頃来るの?」と私が奴に聞くと、 「知らない。昨夜はオランダに泊まったらしいけど、そのうち電話掛かってくだろ。」との答え。 「あの写真の女の子ってマークのガールフレンド?アイリッシュ?それともドイツ人?」 「一緒に来るの?」とさらに聞くと、「知らない。」、、、どうやら奴は何にも知らないらしい。 ベルファストにいた時は、シティセンタに住んでいたせいか、我等がフラットはパブの閉った後のたまり場 になっていたし、大体奴は、ギグの後一人で帰宅したためしがない。大抵誰か連れてくる。 ドイツでも、アイルランドから知り合いのミュージシャンが、大陸?で、ツアーとなれば大抵、数日は泊 まって行ったし、まあ、移動の多いローカルミュージシャンにとって、部屋を貸したり借りたり、泊まった り泊めたりはお互い様。それ以外でもどう言うわけか客が多く、私もそれには慣れていたけれど、何年かぶ りで、昔の友人が訪ねて来ると言うのに。「知らない」の一点張り。 「だから、何でちゃんと聞かないの?」となるわけである。 で、そんなやり取りをしていると、玄関のブザーをならす音。 |